EDとは、勃起障害(Erectile Dysfunction の頭文字をとった略語)で、性交時の勃起の維持や継続が困難なため、満足のいく性交渉が行えない方の症状のことです。
EDに悩む男性は日本では1,000万人以上とも言われており、日本の総人口1億2千7百万人のうち、男性およそ6,200万人(48.8%)といわれておりますので、男性6人に1人の割合ということになります。
また、成人男性がEDの対象と考えると、もっと高い割合となります。
それほどEDは身近な男性の症状といえます。
過去にEDのことを「インポテンツ」と言っておりましたが、蔑称の意味合いが含まれるため、勃起障害・EDと呼ばれるようになりました。
EDの程度は国際勃起機能スコアIIEFで判断され、EDセルフチェックとして活用されています。
国際勃起機能スコアIIEFのチェック概要
※スコアによりEDなし、軽度、軽度〜中等度、中等度、完全EDに分類されます。
ペニスは陰茎海綿体と尿道海綿体で構成されており、主として勃起に強く関与するのは陰茎海綿体です。
普段は、動脈を介して陰茎内に血液が送り込まれていても、静脈を介して陰茎内から出ているため、普段から血流があっても勃起はしません。
勃起は性的な刺激を受け陰茎海綿体の血管が拡張するように神経から指令を受け、陰茎に多くの血液が流れ込み、陰茎が膨張します。すると、陰茎の膨張により血液を送り出す静脈が圧迫され血液が陰茎内に留まる量が増え、陰茎の内圧が高まりペニスは硬くなり、勃起が維持されます。
しかし、ストレスや、糖尿病、高血圧症、生活習慣病、喫煙、飲酒、メタボリックシンドローム、服用中のお薬の影響などが原因となり血管を拡張する機能が低下すると、十分な血液が陰茎内に送り込まれないためEDの症状が現れます。
EDはストレスなど心理的な影響によるものや、生活習慣病(糖尿病、高血圧症、メタボリックシンドロームなど)、喫煙、飲酒、などが原因となる場合や、服用中のお薬の影響により症状が現れる場合、神経障害によって現れる場合などがあります。
生理学的な要因としては血管障害が考えられ、血管が硬くなり、拡張されない状態になると、十分な血流の増加が得られないため、EDとなります。
加齢による動脈硬化もEDの原因と考えられます。
糖尿病は、血管が硬くなったり、神経障害をきたしたりすることがあり、陰茎勃起に必要な血管の拡張が不十分になることがあります。
糖尿病の方にEDを多く自覚する方が多いと言われています。
高血圧症では、血圧が高くなることで、血管に負担が強いられているため、血管が損傷し硬く・狭くなります。このため十分な血流を得られないと考えられます。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖値などの不健康な状態となりやすく、動脈硬化を発症しやすいため、勃起に十分な血管の拡張や血流量の増加が得られにくくなります。
神経の障害によって起こるEDには、糖尿病などの内科的な病気や、前立腺がん・膀胱がんの治療の影響によって神経が損傷している場合や、脊髄損傷、脳出血、脳腫瘍などの脳の病気によるものがあります。
これら神経の障害では、性的刺激を受け、陰茎への血流増加を指示する命令系統に障害が生じ、陰茎の血管拡張が阻害されEDの症状が現れると考えられます。
精神安定剤や抗うつ剤、抗男性ホルモン剤、抗コリン剤、一部の降圧剤などは、神経系に薬の効果として働きますが、勃起に関する神経にも及ぶ場合があり、EDの原因となることがあります。
ストレスや不安など心理的な緊張状態にあると、体がこわばり、血管も萎縮した状態となることがあります。
これにより、勃起に必要な血管の拡張が阻害され、十分な陰茎への血流が得られず、EDの症状となることがあります。
緊張して、思い通りに勃起が得られなかったという経験のある男性がEDの方に限らず多いこともそのひとつです。
過度の飲酒や喫煙は、勃起の機能を低下させることがあります。
喫煙は、血管を収縮させる作用があり、血液の流入を妨げ、アルコールは神経の伝達に影響することなどによりEDの原因となることがあります。
また、血液が「ドロドロ」になることで、血流に影響を及ぼすことになります。
ED治療薬として、「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類が国内で認可を受け医療機関で処方されていますが、いずれも勃起の際に陰茎の血管を拡張させ勃起を補助する働きがあります。
勃起へのプロセスとして、いくつか神経伝達のプロセスがありますが、そのうち、「ホスホジエステラーゼ(PDE)」のうち「タイプ5(PDE-5)」が勃起時のの血管拡張に関与しており、ED治療薬はこのPDE-5の働きを抑えることで性的刺激を受けたときに陰茎の血管を拡張させ、陰茎勃起を円滑に行うことが出来るようになります。
ED治療薬が発売されるまでは、塩酸パパベリンやプロスタグランディンE1製剤などを陰茎海綿体への直接注射することで勃起を促す方法も行なわれていました。
しかし、これらの方法は医療機関での注射療法しか認められていなかったため、あまり広く行われておりませんでした。
現在、ED治療は「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3大ED治療薬が服用が主になり、これら注射療法はほとんど行われていません。